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神戸地方裁判所尼崎支部 昭和49年(む)83号 決定 1974年4月25日

主文

神戸地方検察庁尼崎支部検察官原伸太郎が、申立人らに対し、昭和四九年四月二四日になした被疑者Sに対する接見の日時を同月二六日午前九時と指定するとの処分を取消す。

右検察官は、申立人らに対し、昭和四九年四月二五日に接見の申出あり次第、直ちに被疑者Sに対する接見をさせねばならない。

理由

本件申立の趣旨および理由は別紙準抗告申立書記載のとおりである。

よって判断するに、本件関係記録および申立人川西譲、同山内康雄から事情を聴取した結果によれば、Sは昭和四九年四月九日殺人の被疑事実により勾留され、同時に本件弁護人以外の者との接見を禁止されたものであること、次いで神戸地方検察庁尼崎支部検察官検事佐藤惣一郎によりいわゆる接見等に関する一般的指定がなされたが、同月一〇日右指定は当裁判所により取消されたこと、その後勾留期間を一〇日間延長され、現在代用監獄である兵庫県警察本部警察署留置場に勾留されていること、同月二四日午前一一時頃本件弁護人たる申立人らが本件被疑事件を担当する神戸地方検察庁尼崎支部検察官原伸太郎に面会して右被疑者に接見したい旨を申し入れたところ、同検察官は同日午後三時過ぎ頃に至って、同月二六日午前九時にその接見時間を指定したこと、以上の諸事実が認められる。

ところで、弁護人が右被疑者との接見を求めたのに対し、その接見時間を申立時から約四六時間も後の翌々日に指定するが如きは、法によって保障された接見交通権を否定するに等しい処分であって相当でないことは明らかなところである。もっとも、刑事訴訟法三九条三項によれば、捜査官は捜査のため必要があるときはその接見の日時、場所および時間を指定することができるけれども、その指定は被疑者の防禦権を不当に制限するものであってはならないところ、前記のような接見時間の指定は、本件被疑事件の重大性、捜査の困難性、本日までの申立人らの右被疑者との接見状況等を考慮したとしても、同項の指定権の濫用に外ならず、不当な処分であるといわざるをえない。

よって本件申立はその理由があるものと認め、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項により、前記検察官のなした処分を取消したうえ主文第二項のとおり決定する。

(裁判官 寺田幸雄)

<以下省略>

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